令和6年予備試験:憲法(予想E)
憲法(3枚半)
第1 設問(1)
- A町内会は「認可地縁団体」(地方自治法第260条の2第1項)であり、その規約に定める目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。A町内会規約の目的には、「会員相互の親睦及び福祉の増進を図り、地域課題の解決等に取り組むことにより、地域的な共同生活に資すること」が掲げられ、達成するための事業として、⑤その他A町内会の目的を達成するために必要なことなどが挙げている。
- 祭事挙行費を町内会の予算から支出することがA町内会規約の目的の範囲内であれば、支出することができるが、目的の範囲内といえるか。
- まず、祭事挙行費を町内会の予算から支出することは、町内会の会員が神道を信仰することを示す側面があることから、神道を信仰しないものの信教の自由(憲法(以下、略)20条1項)を制約する。また、信教の自由は、明治憲法下での保障が不十分であったことの反省に基づくことから、権利として重要性が高いものである。
- もっとも、憲法は、対国家間の関係を規律するものであるから、私人相互に直接適用されるものではない。そこで、私法の一般条項に憲法の趣旨を取り込んで、目的条項を解釈するのが妥当と解する。
- 本件では、祭事の宗教的意義は明らかであるから、⑤そのほかA町内会の目的を達成するために必要なことに該当するか否かは、行為対象の来歴、態様、行為者の宗教的意義、拠出される費用の大きさ、制約される利益などの事情を総合して判断するのが妥当と解する。
- まず、C神社は、宗教法人ではないものの、派遣された宮司により神道方式により神事が行われる。また、これは、神道を信仰しないものにとっては、神道を信仰することを表明する側面があるため、不利益を受けることになる。しかし、団体内部の神道を信仰する者の信仰の自由への配慮も必要であるし、この利益も重要性が高いものである。また、伝統舞踊は集落に伝えられてきた文化であって、文化を継承するという世俗的目的もこの祭事は有しているし、構成員の宗教的意識もまばらであり、必ずしも宗教的意識が強いものとはいえない。1世帯当たりの費用も1,000円と金額も低い。
- 以上を総合すると、文化継承という地域社会にとって重要な目的を達成するために必要といえるため、目的の範囲内である。
- 以上より、祭事挙行費を町内会の予算から支出することがA町内会規約の目的の範囲内であり、予算から支出することが可能である。
- なお、会員Eは「A町内会は任意の私的団体なのだから、私たちが決めたやり方でいいはずだ。」と主張しており、これは、団内内部の事項は内部の意思を尊重すべきであり、司法の統制は及ばないことを根拠としている。しかし、地方自治法第260条の2第1項では、「地域的な共同活動を円滑に行うため」と規定しており、これは、団体内部の他の者の利益にも十分配慮すべきとの趣旨と解されることから、Eの主張は妥当でない。
第2 設問(2)
- 町内会費8000円を一律に徴収することがA町内会の構成員の協力義務の範囲内といえるか。
- まず、町内会費の内、1000円はC神社の祭事に使用されることから、これは、神道を信仰しない者の宗教上の祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない自由(第20条第2項)を制約するものである。また、第1でみたように信仰の自由は重要性が高い。他方で、A町内会は加入率が100パーセントであるものの、任意団体であり、脱退はいつでもできるため、強制の程度は弱いものであり、制約は強くない。
- そこで、協力義務の範囲内かどうかは、侵害される利益と得られる団体利益などの事情を総合考慮して、相当の範囲内といえるかどうかで判断すると解する。
- まず、氏子意識の強い会員Gのような者にとっては、主張の通り、祭事を行うことも重要な権利であって、そのような者たちの利益を保護する必要性は高い。また、金額も1000円と高くなく格別高い負担とはいえない。もっとも、Xが主張するように、1000円を差し引いた7000円を回避として徴収する方法は容易に取りえるのであって、会員Hの主張するような一律徴収には妥当性が無い。また、地方自治法第260条の2第1項は、地域住民の他の者の利益にも十分配慮することを求めているものと解されることから、制約される人権にも十分配慮するべきである。
- 以上より、相当の範囲内とはいえず。協力義務の範囲外である。
- よって、一律に徴収することはできない。
【所感】
会員の主張、Xの主張を注意深く読むことで、出題者の意図をくみ取ることができたにも関わらず、会員の主張に気づくのが遅くなってしまい、ちぐはぐになってしまった。
また、判断枠組みの定立も全て総合考慮で何を書いているのか良く分からない作文になってしまった。過去2回よりも判例への意識、憲法論があまりにも薄いため、E~F評価がついてもおかしくはない。
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