設問 1(1) 1. 本件請負契約は有償契約であるため、売買契約の規定が準用される。(民法第 559 条。以下、法令名省略。)契約内容に適合しない場合には、依頼人は請負人に対し、代金減額請求(第 563 条)が可能である (ア) 本件請負契約は、 A が甲建物を新築することを約し、 B が報酬として約 2 億円を支払うことを内容とし、契約締結の際には、外壁塗装には塗料αを使用してほしい旨を B が伝え、 A はこれを了承しているものである。しかし、 B は A に無断で、塗料βで甲建物に外壁を塗装していることから、これが本件請負契約の内容に適合しないものであるかが問題となる。 (イ) 塗料αと塗料βは同系色であり、また、塗料βのほうが高価である。しかし、塗料αは極めて鮮やかなピンク色の特徴を有し、塗料βは明度が低いという違いがある。また、甲建物は、 5 階建ての店舗用建物であることから、外壁が顧客に与える印象に大きな影響を与えると考えられる。以上の点を考慮すると、契約締結の際に塗料αを使用してほしい旨を伝えていることから、本件請負契約の契約内容として、甲建物の外壁に塗料αを使用することが含まれていたと考えられる。 (ウ) よって、 A が甲建物の外壁を塗料βで塗装したことは、本件請負契約の内容に適合しないものである (エ) B は、塗料αで再塗装することを A に求めた(第 562 条)が、 A はこれを拒絶している。 (オ) 以上より、 B は A に対して、契約内容に適合しないものとして代金の減額を請求することができる。(第 563 条第 2 項第 2 号) 設問 1(2) 1. 依頼者である B が A に対し、債務不履行を理由として損害賠償を請求するためには、① A が債務の本旨に従った履行をしていないこと② A に帰責事由があることが認められる必要がある。 (ア) まず、請負人である A は、塗料αで外壁を塗装することが契約の内容になっていたにも関わらず、塗料βを使用して甲建物の外壁の塗装をしていることから、本件請負契約の内容の債務の本旨に従った履行をしていないことが認められる。(①充足) (イ) 次に A が塗料βを使用...
設問 1 1. Y に対し、ブドウを万引きさせようとした行為について (ア) 甲は、Yに上記ブドウを万引きさせようと考え、Yに対し、ブドウを持ってきてと指示した。 Y は、ちゅうちょしたが、強い口調で言われたため怖くなったものである。また、甲は Y の母親であり、 Y は 6 歳である。以上より、 Y は甲に対し、意思を抑圧され、道具として利用されていると評価できることから、甲は、窃盗罪(刑法第 235 条。以下、法令名省略。)の間接正犯が成立し得る。 (イ) 窃取とは、占有者の意思に反して、自己または第三者の占有に移す行為をいう。本問において、 Y はブドウを見つけることができず、何もとらずに店を出ていることから窃取したとはいえず、既遂犯は成立しない。 (ウ) 次に窃盗罪の未遂罪(第 243 条)の成否を検討する。未遂罪は、犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった場合に成立するところ(第 43 条)、実行に着手とは法益侵害惹起の現実的危険性が生ずる行為をしたときを意味する。間接正犯においては、利用者の行為を基準とすると罪が成立する時期が早すぎるため、道具である Y の行為を基準として考えるべきである。本問において、 Y は他人の財物である C 店のブドウを窃取しようと店内に入り、探したものの、ブドウがある場所を見つけられなかったものであるから、窃盗行為の実行の着手は認めることができない。よって、未遂罪は成立しない。 (エ) 以上より、甲は、 Y に対し、ブドウを万引きさせようとした行為について罪責を負わない。 2. X に対し、ステーキ用の牛肉をとってくるよう指示した行為について (ア) 甲は、 X に対し、ステーキ用の牛肉をとってくるよう指示した。 X は、一旦断ったものの、甲に説得されて、応じたものである。 X は 13 歳である点や説得に応じている点を考慮すると、 X の意思が抑圧されていると評価できず、甲の間接正犯は成立しない。 (イ) 次に、甲は X に対し、ステーキ肉をとってくるよう提案し、 X はこれに応じていることから、窃盗について共同実行の意思が認めることができる。また、甲は、ねらい目の時間帯の情報を提供したり、商品...
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