令和6年予備試験:刑事実務基礎(予想B)

 刑事実務基礎(4枚)

 

第1 設問1

1 小問(1)

(1)詐欺の被疑事実で逮捕状が発付されているため、刑事訴訟法(以下、略)199条の規定により被疑者を逮捕する場合には、令状なくして、捜索又は検証を行うことができる(220条1項、同条3項)。

(2)「逮捕する場合」とは、時間的場所的近接性があればたり、逮捕と捜索又は検証との間の前後関係は問わないと解される。本件では、①の行為と同時に、Aを現場付近で発見して、通常逮捕していることから、Aを「逮捕する場合」にあたる。

(3)次に、Aは現場付近で発見されていることから、①の場所は「逮捕の現場」にあたる。

(4)また、罪証隠滅を防ぐために速やかに証拠を保全する必要性があることから、「必要があるとき」にあたる。

(5)よって、220条1項2号の規定に従って、現場の写真撮影という「検証」及び本件車両内の証拠品の押収という「差押」の処分を令状なくして、行うことができる。

2 小問(2)

鑑定処分許可状および身体検査令状が必要と考えた。

理由 ②の行為は、Aがそれを拒んでいるにも関わらずに、身体への侵襲を行う行為であるいことから、個人の意思に反して、身体という重要な権利利益を侵害する処分として強制処分である。鑑定処分許可状のみでは、172条が準用する139条を準用していないことから、直接強制することができない。そこで、直接強制が可能な身体検査令状(218条1項後段、222条1項本文後段、139条)を併用した。

 

第2 設問2

1 小問(1)

Aがレンタカーを申し込んだ時点で、レンタカーを詐取する故意があったかどうかを判断するために必要なるから。具体的には、本件フェリーの車両用チケットが、レンタカー申し込んだ時よりも前に購入されていれば、Aにはレンタカーを島外に持ち出す意図があったことを推認することができる。

2 小問(2)

積極的に働く事実

5日にX方を訪れた際にAは「昔から欲しかった車種だった。ナンバーも覚えやすいだろ。」などと言っていたという事実から、Aにはレンタカーを詐取する動機があることが推認することができる。もっとも、欲しかった車種だったということからは、単に自らの好みを発現しただけであって、詐取の動機があることの推認力は極めて限定的といえる。

消極的に働く事実

AはVに繰り返し、レンタカーを返却する意思を伝えていたことから、詐取の意図が無いことが推認できる。また、Aに対し、「丙島のレンタカー屋で借りた。」と伝えている事実から、あくまで借りたという認識であったといえ、詐取の意図が無いことが推認できる。

以上より、Pは、Aに詐取する意図が無いと判断して、単純横領罪の罪で公判請求を行った。

3 小問(3)

「横領」とは、所有者でなければできない処分を行う意思である不法領得の意思を発現する一切の行為をいう。

㋐の時点は、あくまで返却期限から1時間を経過した後の時点であるが、返却を1時間過ぎたのみで、直ちに相手方への返還意思が発現されたとはいえないため、横領にあたらず、選択しなかった。㋑の時点は、車両用のフェリーチケットを購入した時点であるが、この時点ではレンタカー自体の処分がなされているものではないため、横領にあたらず、選択しなかった。㋒の時点では、本件車両を本件フェリーの乗り込みんでいることから、島外に持ち出すという所有者でなければできない処分を行う意思が発現されているといえ、「横領」にあたる。よって、㋒の時点を選択した。

 

第3 設問3

検察官面前調書は、公判期日における供述に代えた書面であることから、伝聞証拠にあたり、原則として、証拠とすることができない(320条1項)。もっとも、321条1項2号に該当すれば、例外的に証拠とすることができる。

まず、検察官面前調書では、2月1日のAとの電話内容や5日にAが訪れた際の言動が録取されているものの、公判期日においては覚えていないと供述しており、「実質的に異なった供述」をしている。次に、今日傍聴席にいるのは、Aと同年代の男性が約10名という多数名が出席しており、Aと目配せをしたり、Xの証言中に咳払いをしたりしていたものである。Xもこれら10名の者とは顔見知りであることから、これら状況を踏まえると、お礼参りをされる不安感から、適切な供述ができない情況であるといえ、「公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特段の情況の存するとき」といえる。

以上より、321条1項2号に該当し、採用を決定した。

 

第4 設問4

1 小問(2)

第七十五条では、弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述を「そそのかし」てはならない旨規定されている。Aから提案されていることから、「そそのかし」たとはいえない。しかし、74条の裁判の公正の実現努力義務や5条の信義誠実に職務を行う義務を踏まえると、「そそのかし」とは、決意させた場合だけでなく、偽証を容易にさせるような行為も含むと解する。よって、Yの証人請求はAの偽証を容易にさせることから、「そそのかし」にあたるため、弁護士倫理上問題にあたる行為である。

1 小問(1)

無罪でないことを知りながら、無罪を主張することは、5条の信義誠実に職務を行う義務、74条の公正な裁判の実現との関係上問題のある行為である。

 

 

 

【所感】

紙面いっぱいいっぱいに記載した。形式の変化が著しかったため、民事→刑事の順番に解いた。内容も刑事訴訟法の論文で出るような知識や犯人性や勾留理由など過去解いた問題の知識が余り使えないような問題ばかりでかなり難しいかった。(1)が逮捕に伴う捜索・差押えなのか、領置なのかでかなり迷ったが、「同時に」「現場付近で」逮捕したとの記述があることや令状が発付されていることから、逮捕に伴う捜索・差押えを選択した。どっちが正解なのかは良く分からなかった。問題量が多く、最後まで書ききれた人が少なければ、相対的にBくらいは付くと予想。

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