令和6年予備試験:民事訴訟法(予想D)
民事訴訟法 3枚半
- 設問1
1 当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、職権で、却下の決定をすることができる(民事訴訟法(以下略)157条1項)。
2 L2は、結審が予定されていたその後の口頭弁論期日において、相殺の抗弁を提出しているところ、「故意又は重大な過失」が認められるか。
当事者は、攻撃又は防御の方法は、訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならない(156条)とされている。この義務を前提として、157条1項では時機に遅れた攻撃防御の方法を却下することができるとしている。この趣旨は、適切な時期に提出できたにも関わらず、これを提出しなかった当事者を積極的に保護する必要性は乏しく、また、審理が長期化することによって訴訟経済が害されることを防ぐことにある。そこで、「故意又は重大な過失」とは、適切な時期に提出することが合理的に期待できたにも関わらず提出せず、かつ、審理の長期化を不当に行う意図を有していたことをいう、と解する。
相殺の抗弁は実質的敗訴にもなり得ることから、提出することが必ずしも期待できるものでもない。他方、審理が長期化するおそれはあるものの、L2の主張のとおり、請求異議の訴えでも主張が可能であることから、紛争の一回的解決の観点からは訴訟経済に資するものであるから、審理の長期化を不当に行う意図があったとはいえない。
よって、L2が相殺の抗弁を提出することは、合理的に期待できたともいえず、また、審理の長期化を不当に行う意図を有していたものでもないから、「故意又は重大な過失」があったとはいえない。
3 以上より、裁判所は、相殺の抗弁を却下すべきではない。
第2 設問2
1 Aは、本件訴訟において訴訟告知(53条1項)を受けており、これに参加しなかったものである。そのため、46条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなされる(53条4項)。よって、後訴において、前訴判決の裁判の「その効力」(46条1項)がAにも及ぶ。
2 46条1項の効力とは、既判力と同じ効力か、効力の性質が問題となる。46条の趣旨は、補助参加したにもかかわらず、被参加人が敗訴した場合に、公平上その責任を分担する点にある。また、46条は除外事由を定めており、既判力とは異なるものであることを前提としている。そこで、既判力とは異なる参加的効力と解する。
3 次に、参加的効力の客観的範囲が問題となる。参加的効力は、主文の判断のみならず理由中の判断にも及ぶと解する。ただし、理由中の判断は、判決の主文を導き出すために必要な主要事実や法律判断の認定にのみ及ぶ。参加者においては、理由中の判断について争うのが通常であるからである。
これを本件について、見ると、前訴の訴訟物は本件契約の売買代金債権の存否であり、Xは請求原因として代理権の授与を主張していた。しかし、前訴判決においては、YはAに代理権を授与していないことを理由として、棄却判決が確定している。よって、参加的効力は、YはAに代理権を授与していないとの理由中の判断にも生ずる。よって、後訴において、Aが、AはYから代理権を授与されていないとの主張は参加的効力により排斥されるべきである。
【所感】
設問1は面食らって、何も分からなかった。完全に実力不足であるが、3つの要件に点数が割り振られていることを考えれば、全要件をとりあえず検討するべきであった。かなり点数を落としていると思います。設問2は過去問と同種の問題であった。多くの人ができていると思うが、訴訟告知者と被告知者の主観的範囲について余り触れられなかったがかなり大きいミス。当然に及ぶとしたが、利害対立があることから、問題意識を示すべきであった。予備校教材、問題の限界を感じてしまった(添削道場では、その点の問題意識は特に触れられていなかったため、スルーしてしまった。)。D~E程度で何とか耐えていてほしい。
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