令和4年予備試験:知的財産法(選択科目)
設問1
1.
Xデータベースは、建売住宅についてこれまで存在していなかったものを、Xの従業員が多大な労苦を重ねて建売住宅の情報を収集して制作したものとの主張について
(ア) データベースは、その情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有する場合に、著作物として保護される(著作権法第12条の2第1項。以下、法令名省略。)保護される表現部分は、データベースに格納されている情報そのものではなく、情報の選択又は体系的な構成の創作的な部分のみである。そのため、Xデータベースに格納されている建売住宅の情報が、従業員が多大な労苦によって収集して、制作したとしても、著作物性の判断に影響を与えるものでない。
(イ) 以上より、Xの「建売住宅についてこれまで存在していなかったものを、Xの従業員が多大な労苦を重ねて建売住宅の情報を収集して制作した」旨の主張は妥当でない。
2.
建売住宅の選択、住みやすさ等の独自のデータ項目の選択及びそれらの画面表示上の順序に独自の工夫が凝らされているものとの主張について
(ア) データベースは、その情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有する場合に著作物性が認められるが、創作性とは、著作者の個性が何らかの形でその表現に現れていれば足りると解され、個性の有無は、表現の選択の幅の有無によって判断する。表現に選択の幅があれば、通常何らかの個性が現れるからである。
(イ) 本問において、建売住宅の情報はA県内に実在する全ての2階建ての建売住宅約3万件を選択したものであり、また、データ項目の「住みやすさ」とは、Xのベテラン従業員のセンスと感覚により、社内での検討を経て、
居住した場合の主観的な満足度の予想を5段階にランク付けしたものである。建売住宅のエリアをA地区に設定した点や2階建てに設定した点は、選択の幅が複数ある中から選択されたものであることから、その情報の選択について個性が認められ、創作性が認められる。また、「住みやすさ」のデータも、主観的な満足度をランク付けしたものであるから創作性が問題なく認められる。一方で、販売開始年月日の新しい順に表示される構成は、ありふれたものであるから創作性を認めることはできない。
(ウ) 以上より、建売住宅の選択、住みやすさ等の独自のデータ項目の選択に独自の工夫が凝らされ、著作物性を有するとの主張は妥当である。
設問2
1.
Yが、Xデータベースの建売住宅約3万件のデータのうち、1万件分の建売住宅のデータを取りだして、Yデータベースを作成した行為について検討する。Xデータベースは、格納されている建売住宅の情報、「住みやすさ」という項目の情報の選択に創作性が認められるものである。Yは、1万件分の建売住宅、「住みやすさ」という情報をXデータベースからそのままデッドコピーして、Yデータベースを制作したものであるから、複製権(第21条)が及ぶ
2.
以上より、YがYデータベースを制作する行為は、Xの著作権を侵害するものである。
設問3
1.
Xは、Xデータベースを開発費用3億円、開発期間2年間という多大な投資を行って制作したものであるから、Yのような模倣行為に対しては一定の法的保護がなされるべきように思える。しかし、情報のような無体物は所有権の対象でもなく、また、財産的価値のある情報のみが知的財産法によって個別に保護されるものである。よって、安易な法的保護を図るべきではないと考えるのが妥当である。
2.
以上より、Xの上記主張は妥当でない。
設問4
1.
Q製品の販売差止めについて
(ア) 著作権侵害に基づく差止請求権は、著作者、著作権者等著作権法第112条に列挙されている者に認められているものであり、著作物の利用許諾を受けているもの(第63条)は含まれていない。また、利用許諾を受けている者は、あくまで著作権者に対して、差止請求権を行使しないことを請求することが可能な地位に過ぎず、これは独占的な許諾を受けている場合であっても変わるものでない。よって、独占的な利用許諾を受けているに過ぎないPには、固有の差止請求権は認められない。
(イ) 以上より、PはQ製品の販売差止めを請求することができないとのQの主張は妥当である。
2.
損害賠償について
(ア) Pは、Xから独占的に作成し、販売することを認められており、第三者が著作物を利用しない環境で事業を営むことを期待すると考えられる。無断で第三者が著作権を侵害している場合には、自己の製品の販売数が減少し、事業の売り上げに影響を与えるため、上記期待が害される。よって、Pは上記期待を害されたものとして、損害賠償請求をすることができる。
(イ) 以上より、Pは損害賠償を請求することができないとのQの主張は妥当でない。
まず、設問1について。「著作権法かよ…」、「データベースかよ…」 と思い、脇汗が止まりませんでした。とりあえず、条文を探し要件をあてはめました。Xの主張を「多大な労苦」、「独自の工夫」の2つに分けて検討する意味は無かったなと思います。結果的に分量のバランスが悪いなと思います。
次に、設問2について。「複製、譲渡が問題になるはず!分けて検討しよう!」と書き始めましたが、譲渡を書いている途中で複製のみ解答せよとの指示に気づき、記載を削除しました。結果として、薄っぺらい文章になりました。今みると、依拠性や複製の定義を欠くなど丁寧に書くことが必要だったと思います。
設問3。本田先生の授業で出てきたことは覚えていましたが、肝心の規範は一ミリも思い出せませんでした。とりあえず、埋めたという感じです。
設問4。特許法の勉強で結論だけは知っていました。ただ、論理は覚えていないので、その場で適当にでっち上げました。勉強不足。
論文の勉強をそもそもしていなかったこと、論文の答案を書いた経験がなかったことを踏まえると、結構頑張ったなと思います。自分をほめたい。今後は、基礎マスターの授業が残っているので、それを聞ききること、あとは判例の規範を論理構造まで正確に記憶することに努めていきたいと思います。
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