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無資格法務と予備試験合格後のキャリア

 私は現在、日本の伝統的な大企業(JTC)の法務部に勤務しています。 予備試験に合格し、企業法務系の法律事務所から内定をいただいた今、私のキャリアパスは大きく3つに分かれており、それぞれの道について、率直な想いを綴ります。 キャリアパス1:現職残留(インハウスローヤー) 長年勤めた会社に残り、弁護士資格を活かしてインハウスローヤーとして働く道です。しかし、私の場合は退職が規定路線です。 まず、私は中途採用かつ無資格の男性という、社内では最も昇進で不利になる属性です。現職での評価は「中の上」であるものの、プロパー(生え抜き)社員と比べると昇格年次が大幅に遅れています(前職が小規模な会社だったため、年次に対しディスカウントを受けた役職で入社していることが主な要因です)。さらに、司法修習の1年間は会社を離れることになるため、その期間の評価がゼロになります。これは、その後の管理職への登用において、決定的に不利になるかなと予測しています。 そのため、たとえ弁護士になったとしても、このまま現職にインハウスとして残るのは待遇面で合理的ではありません。 仮にインハウスとして勤務するとしても、一度企業法務系の法律事務所で経験を積み、待遇を大幅に上げてから、別のJTCで管理職又はそれに準ずる専門職として入社を目指すのが最善手だと考えています。 とはいえ、仕事内容のつまらなさ、評価のされにくさ、社内での法務部門のプレゼンスの低さ、中途入社になること、男であることを考えると、インハウスはないなと考えています。 キャリアパス2:企業法務系事務所 予備試験合格後、ほとんどの合格者が目指すキャリアなのではと思います。私も内定をいただきました。 企業法務系事務所は専門性が高く、難易度の高い案件に関われるのが大きな魅力です。待遇も現職よりは上がりますし、専門家としてキャリアを築いていくことができます。 しかし、個人的な懸念は、「無資格法務としての経験が全く考慮されない」という点です。正直なところ、JTCで培った法務経験は、企業が直面する課題を理解する上で、決して無駄ではないと考えているのですが、、法律事務所では、弁護士資格を持った状態でのインハウス経験と無資格法務の経験は、全く異なるものとして扱われるため、無資格法務の方は就活の時は注意した方が良いです。 そのため、新卒入社の弁護士と全く同じ...

キャリアの岐路に立ってみて

最近、職場での不満が積み重なってきてる。「やはり足元を見られているのかな」と感じることもあるし、「転職しなければよかったかも」と思うこともままある。 とはいえ、まだ我慢できるレベルの不満。どんな環境でも一定の不満は出てくるものだろうと割り切って、我慢してる、みたいな状況。 改めて気づいたのは、自分は組織に対して不満を感じやすいタイプなのかもしれない...多少ハードな仕事でも、自分で決定できる立場の方が向いてる気がする(組織からすると「こんな人材はいらない」と思われるかもしれないけど...笑)。 弁護士としてのファーストキャリアを考えるにあたっても、自分の思考パターンや組織に対して抱きやすい感情も参考にしないとな。やっぱり、街弁として自分の裁量とペースで仕事するのが向いているんじゃないかな。ただ、業務内容に興味持てるか、営業力を後天的に身に着けられるかが課題だよなー。 一方で、コスパよく報酬を稼ぐならインハウスの方が良いかも。営業力もいらないし。でも、年齢を重ねるごとに組織内での居心地が悪くなりそう。「なぜあの人より自分の役職が低いんだ!」みたいな感情を抱えながら人生を過ごしたくないよね。 改めて考えると、コスパの軸も大事だとは思うけども、自分で意思決定ができるか、それに基づいて行動できるかが幸福感との関係では大事なんだろうな~。

令和6年予備試験の結果

令和6年予備試験論文式試験、口述式試験共に合格し、最終合格しました! ばんざーい!🙌 この1ヶ月ほどは勉強から解放され、司法試験後のキャリアについて考えたり、目の前の仕事をこなしたり、少し就活をしながら過ごしてきました。いくつかの説明会に参加したものの、改めて司法試験後のキャリアについて悩みが深まっています。 現時点での主な選択肢はこんな感じ: 企業法務系事務所に新卒で入所 地元の一般民事を扱う事務所に新卒で入所 現職にインハウスとして残留(または転職) 元々は企業法務系事務所への入所を考えていましたが、説明会に参加するうちに様々な不安が出てきました。労働観のギャップ、報酬体系、将来のキャリアパスなど、想像していたものと現実のズレを感じています。 インハウス残留は最も楽な選択肢。報酬も人間関係も仕事の難易度・量的にもかなりバランスが取れていて、正直不満がありません。ただ、中途入社ということもあり昇格面での不利益があることや、初手インハウスによって将来のキャリア可能性を狭めるリスクも気になります。 一般民事は業務内容、クライアント層、収入面の見通しなど分からないことだらけで躊躇しています。 当面は全ての可能性を残して「企業法務系事務所の就活 → 司法修習前までにインハウス残留か退職かを決める」という流れで進めようと思います。一般民事系は司法修習の時に改めて考えてみるかな。 元々は「将来的には独立したい」「1億円プレーヤーになりたい」「Chambersなどの評価機関から認められたい」といった漠然とした夢を抱いていました。でも今は、自分の能力や現在の立ち位置から見て、そんな可能性が本当にあるのか自信がなくなっています。 年齢を重ねるにつれて昔みたいな根拠のない自信も薄れ、保守的な選択肢ばかり考えるようになり、「将来の人生つまらなそうだな」なんて思い始めています。バーンアウト気味なのかも... でも、保守的なことばかり考えていても全然面白くないし、何より将来にワクワクしない。思いっきりチャレンジしてみるのが良いはず!と自分に言い聞かせて、今後のキャリアに向けて今日から頑張ります。 まずは司法試験から。

令和6年予備試験:知的財産法(予想A)

 知的財産法(4枚) 第1 設問1 Cは、①本件小説の翻案権(26条)及び本件ポスターにつき有する複製権(21条)、譲渡権(26条の2第1項)の侵害、②本件キャラクターの名称につき有する複製権、譲渡権の侵害、③本件キャラクターのセリフにつき有する複製権、譲渡権の侵害をDに主張することが考えられる。 ①について まず、本件小説は言語の著作物(10条1項1号)であるから、Cが創作者と認められれば、著作権を有する(17条1項)。 Cはαの過去作品と本件資料を基にして、本件小説を執筆していることからCに創作的寄与が認められることから、著作者である。よって、Cは本件小説につき著作権を有する。なお、Aとは一切連絡を取っていないことから共同著作物(2条1項12号)にはあたらない。 「翻案」とは、原著作物に新たな創作的表現が付与され、原著作物の表現上の本質的特徴を感得し得るような著作物を創作する行為をいう。本件では、Cが捜索した本件キャラクターの外観上の特徴を視覚的に表現した絵画が用いられていることから、D独自の創作表現が付与され、かつ、本件小説に含まれる本件キャラクターの外観上の特徴が感得し得るような状態となっていることから、「翻案」にあたる。よって、本件小説の翻案権を侵害する。 また、二次的著作物の原著作物の著作者は、二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を有する(28条)ことから、本件ポスターの印刷及び販売行為は、本件ポスターにつき有する複製権、譲渡権を侵害する。 よって、Cの主張は認められる。 ②について 本件キャラクターの名称は言語の著作物に該当し得る。もっとも、著作物(2条1項1号)といえるためには、「創作的に」表現されたものでなければならない。 創作性は著作者の個性が何らかの形で現れていれば足り、個性の有無は表現の選択の幅の有無によって判断する。本件キャラクターの具体的名称は明らかではないが、通常名称は短い文字数で表現される。また、名称として認識されるためには、文字や順列も一定程度制限がかかるものである。よって、本件キャラクターの名称の創作にあたり、表現の選択の幅は認められず、「創作的に」表現されたものとはいえない。なお、名称に無方式で発生する著作権の独占権を及ぼす必要性は低いし、名称に独占権が必要であれば、商標権によれ...

令和6年予備試験:刑事実務基礎(予想B)

 刑事実務基礎(4枚)   第1 設問1 1 小問(1) (1)詐欺の被疑事実で逮捕状が発付されているため、刑事訴訟法(以下、略)199条の規定により被疑者を逮捕する場合には、令状なくして、捜索又は検証を行うことができる(220条1項、同条3項)。 (2)「逮捕する場合」とは、時間的場所的近接性があればたり、逮捕と捜索又は検証との間の前後関係は問わないと解される。本件では、①の行為と同時に、Aを現場付近で発見して、通常逮捕していることから、Aを「逮捕する場合」にあたる。 (3)次に、Aは現場付近で発見されていることから、①の場所は「逮捕の現場」にあたる。 (4)また、罪証隠滅を防ぐために速やかに証拠を保全する必要性があることから、「必要があるとき」にあたる。 (5)よって、220条1項2号の規定に従って、現場の写真撮影という「検証」及び本件車両内の証拠品の押収という「差押」の処分を令状なくして、行うことができる。 2 小問(2) 鑑定処分許可状および身体検査令状が必要と考えた。 理由 ②の行為は、Aがそれを拒んでいるにも関わらずに、身体への侵襲を行う行為であるいことから、個人の意思に反して、身体という重要な権利利益を侵害する処分として強制処分である。鑑定処分許可状のみでは、172条が準用する139条を準用していないことから、直接強制することができない。そこで、直接強制が可能な身体検査令状(218条1項後段、222条1項本文後段、139条)を併用した。   第2 設問2 1 小問(1) Aがレンタカーを申し込んだ時点で、レンタカーを詐取する故意があったかどうかを判断するために必要なるから。具体的には、本件フェリーの車両用チケットが、レンタカー申し込んだ時よりも前に購入されていれば、Aにはレンタカーを島外に持ち出す意図があったことを推認することができる。 2 小問(2) 積極的に働く事実 5日にX方を訪れた際にAは「昔から欲しかった車種だった。ナンバーも覚えやすいだろ。」などと言っていたという事実から、Aにはレンタカーを詐取する動機があることが推認することができる。もっとも、欲しかった車種だったということからは、単に自らの好みを発現しただけであって、詐取の動機があることの推認力は極めて限定的といえる。 消...

令和6年予備試験:民事実務基礎(予想B)

 第1 設問1 1 小問(1) 所有権に基づく返還請求権としての建物明渡請求権 2 小問(2) 被告は、原告に対し、本件土地を明渡せ 3 小問(3) ①Xは本件土地を所有している。 ②Yは本件建物を通じて本件土地を占有している。 4 小問(4) ①Xは、令和2年7月1日、Aとの間で本件土地を賃料月額10万円で賃借することを内容とする本件賃貸借契約を締結した。 ②Xは、同日、①の契約に基づき、本件土地をAに引き渡した。 ③Aは、令和5年3月17日、Yとの間で本件土地を賃料月額10万円で貸借することを内容とする本件転貸借契約を締結した。 ④Aは、同日、③の契約に基づき、本件土地をYに引渡した。   第2 設問2 1 小問(1) (i)① 主張すべきである。 ② (1)Xは、令和6年3月7日、Aに対し、本件延滞賃料の支払を2週間以内にするよう求めた。 (2)令和6年21日は経過した。 (3)Xは、本件賃貸借契約を解除することを内容とする内容証明郵便を送達し、令和6年3月31日にAに到達した。 2 小問(2) (ii)①主張すべきでない。 ②本件土地の無断転貸は賃借人の債務不履行を内容とするものであり、これは債権者が主張立証の義務を負うものではないから。   2 小問(2) Xは、令和4年11月9日、本件商品をAに引渡した。 理由 同時履行の抗弁権を排斥するため。   第3 設問3 1 小問(1) Xは、Aに対し、令和4年11月9日、上記腕時計の代金として、100万円を支払った。 和解の効力として、残った債務がすでに消滅している点を主張するため 2 小問(2) (i) ①署名部分がAによってされた署名か否かを争う趣旨かを確認するべきである。 ②私文書は、本人の署名があるときは、真正に成立したものを推定される(民事訴訟法228条4項)。そのため、Aの署名がAによってなされいれば、真正成立が法律上推定されることから、文書の形式的証拠力が認められることになる。Qの否認するというのが、文書の形式的証拠力を争う趣旨なのか、実質的証拠力を争う趣旨が不明瞭であるから、これを確認する必要があるから。 (ii) Aによってされた署名かどうかを争う場合 この場合、Aのよって署名...

令和6年予備試験:民事訴訟法(予想D)

 民事訴訟法 3枚半   設問1 1 当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、職権で、却下の決定をすることができる(民事訴訟法(以下略)157条1項)。 2 L2は、結審が予定されていたその後の口頭弁論期日において、相殺の抗弁を提出しているところ、「故意又は重大な過失」が認められるか。  当事者は、攻撃又は防御の方法は、訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならない(156条)とされている。この義務を前提として、157条1項では時機に遅れた攻撃防御の方法を却下することができるとしている。この趣旨は、適切な時期に提出できたにも関わらず、これを提出しなかった当事者を積極的に保護する必要性は乏しく、また、審理が長期化することによって訴訟経済が害されることを防ぐことにある。そこで、「故意又は重大な過失」とは、適切な時期に提出することが合理的に期待できたにも関わらず提出せず、かつ、審理の長期化を不当に行う意図を有していたことをいう、と解する。 相殺の抗弁は実質的敗訴にもなり得ることから、提出することが必ずしも期待できるものでもない。他方、審理が長期化するおそれはあるものの、L2の主張のとおり、請求異議の訴えでも主張が可能であることから、紛争の一回的解決の観点からは訴訟経済に資するものであるから、審理の長期化を不当に行う意図があったとはいえない。 よって、L2が相殺の抗弁を提出することは、合理的に期待できたともいえず、また、審理の長期化を不当に行う意図を有していたものでもないから、「故意又は重大な過失」があったとはいえない。 3 以上より、裁判所は、相殺の抗弁を却下すべきではない。   第2 設問2 1 Aは、本件訴訟において訴訟告知(53条1項)を受けており、これに参加しなかったものである。そのため、46条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなされる(53条4項)。よって、後訴において、前訴判決の裁判の「その効力」(46条1項)がAにも及ぶ。 2 46条1項の効力とは、既判力と同じ効力か、効力の性質が問題となる。46条の趣旨は、補助参加したにもかかわらず、被参加人が敗訴した場合...